大きなタコのような妖怪に船が襲われているシーン、と言えばなんとなく頭に浮かんできませんか・・・?その妖怪が日本のものならそれは「アッコロカムイ」!日本に伝わる大タコの妖怪、アッコロカムイの真実に迫ります!
妖怪「アッコロカムイ」とは
アッコロカムイとは、アイヌ民族に伝わる巨大なタコの妖怪のことです。漢字では「大章魚」と表記します。
北海道の内浦湾(噴火湾)に住んでおり、1ヘクタールほどの大きさで、「湾の主」ともいわれていました。
アッコロカムイは全身赤い色をしていたので、その体の赤い色が海に反射して海はもちろん空も真っ赤になり、遠くからでもわかったということです。それだけわかりやすければ近づくこともなかったでしょうけれど、うっかり近くを通りかかってしまった漁船はアッコロカムイに丸呑みにされるため、漁師たちはいつも恐れていました。
アイヌ民族に伝わる伝説
アッコロカムイの伝説はアイヌ民族に伝わったものです。
かつてレブンゲ(虻田郡豊浦町字礼文華)の地に巨大なクモの怪物「ヤウシケプ」が現れました。ヤウシケプは家々を破壊し土地を荒らし回ったため、人々は恐れおののき、その悲鳴は神々にまで届きました。そこで海の神レプンカムイが人々を救うために、ヤウシケプを海に引き取ることになったのです。噴火湾内に引き入れられたヤウシケプは姿を大きなタコに変えられ、アッコロカムイとして海で暴れるようになったのだといわれています。
クラーケンと何が違う?
海に棲む大きなタコの妖怪といえば、北欧に伝わる「クラーケン」を思い出す方も多いのではないでしょうか?
クラーケンは、中世時代からヨーロッパ方面の海(ノルウェー近海、アイスランド沖など)に出没しては船を沈めると言われた超巨大な伝説上の生物です。
主に超巨大なタコやイカといった頭足類の姿で描かれることが多く、そのあまりの身体の大きさに全身を確認することができません。そのため、船乗り達はそれをクラーケンだと認識できず、小島と間違えて上陸してしまう事もあったということです。そこまでの大きさだとさすがにアッコロカムイとは差がありますね。
凪で船が進まず、次に海面が泡立ってきたならそれはクラーケンが出現する前触れ。アッコロカムイは全身が真っ赤で周囲が赤くなることで出現を知る事ができますが、クラーケンは色が目立つわけではないのです。その点でも違いがあります。
アイヌ民族に伝わる類話
アイヌには、噴火湾の大きな化け物の話が他にもいくつか伝わっています。
ある昔話では、川から流れてきたモウル(女の肌着)が化けた「アツゥイカクラ」または「アヅイカクラ」という巨大ナマコが流木などにくっついて海に浮かんでおり、近づいた漁船をひっくり返すそうです。
また、「レブンエカシ」という名前の化け物は8頭ものクジラを飲む込むといわれており、いくつかの逸話もあります。例えば、ある時2人の漁師がレブンエカシに飲み込まれた後、なんとか吐き出されましたが、その毒にあたったのか髪が抜けて頭が禿げ上がってしまったそうです。命が助かったのはよかったものの、禿げてしまったのは大変お気の毒としか言いようがありません・・・。
まとめ
アイヌに伝わるアッコロカムイの話や海に棲む妖怪たちの話、いかがでしたか?
船に乗っていて海の真ん中でこんな妖怪たちに出会ってしまったら・・・と思うとゾッとしますね。海では逃げようがないですから、陸で妖怪に出会うのとはまた違う恐ろしさがあります。欧米ではクラーケン、日本ではアッコロカムイ・・・。どこの国でも同じように、海の恐怖を感じていた人々から生まれた妖怪が大タコの妖怪なのかもしれませんね。