中国では、古来から現在に至るまで、さまざまな妖怪が存在し活躍しているといわれます。世界中を見渡してみても中国ほど「妖怪天国」な国はないのでは?
古代の「山海経」に出てくる異形の怪物たちをはじめ、「西遊記」「封神演義」の主役たち、鬼神である夜叉や中国の代表的な妖怪キョンシーまで、中国には妖怪がいっぱい!その中でも最強の中国妖怪はいったいどれなのでしょうか?
また、めちゃくちゃ美女の妖怪もいるらしいですよ。そんな気になる中国妖怪について調べてみました!
中国に息づく妖怪とは
中国は、広大な土地に大昔から人類がいて歴史を創ってきた国なので、妖怪もたくさん息づいてきたと言えます。例えば、有名なものには白沢や孫悟空などがおり、かの九尾の狐や麒麟もまた中国で生まれた妖怪です。
しかし、中国に実際にいた妖怪の数に比べると文書や絵などの「形」として残されている妖怪の数は多くないようです。残されていない妖怪を合わせてみると、とんでもない数の妖怪が中国に存在しているのかもしれません。
日本の妖怪との関わりは?また、中国では妖怪はどのような存在なのでしょうか?
中国の妖怪が日本に渡った?
中国から渡ってきてポピュラーになった日本の妖怪はたくさんいます。
妖怪学の権威である井上円了は、自著の「妖怪学」の中で、
「我国の妖怪は多く支那より入り来たり、真に日本固有と称すべきものは甚だ少なし、余の想定するところによるに、我国今日伝はる妖怪種類中七分は支那伝来、二分は印度伝来、一分は日本固有なるものの如し」
-Wikipedia参照
と述べており、日本の妖怪の約70%が中国伝来のものであるとしています。
この70%という数字の信ぴょう性は多少怪しいものの、多くの妖怪が中国から伝わってきていることは間違いなさそうです。ちなみに、日本でもおなじみの天狗や山姥なども中国出身ということですよ。
また、「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ映画には、鬼太郎軍団と中国妖怪たちが闘う話があり、その中に出てきた中国妖怪のリーダーが「チー」でした。妖怪に丸薬を飲ませて反物に変えてしまうので、鬼太郎たちも大苦戦します。実は、チーは九尾の狐である玉藻前の弟であり、300年前に和尚の宝力によって殺生石とされた姉の復讐で日本にやってきたということでした。中国の妖怪と日本との関わりが垣間見えますね。
中国では妖怪はどんな存在?
中国では、妖怪と神の境界線があいまいです。神なのに妖怪としてバイトをするようなものや一般的には神の方が妖怪よりレベルが高いものの逆パターンもあったりします。その背景には当時の中国における「官軍」と「賊軍」の関係が投影されているようで、妖怪の世界も人間の世界と同じだということがわかります。
古書には、人間と同じような暮らしをしていた幽霊やキツネの話が残されていたりするので、中国では妖怪は身近で親近感がある存在だったのかもしれませんね。
キョンシーは中国の妖怪代表格
1985年の香港映画、「霊幻道士」で有名になったキョンシー。両腕を前に伸ばしたままピョンピョン飛んで徘徊する姿がユニークでしたね。このキョンシー、実はもともとは「倒れた死体」という意味の「僵尸(殭屍)」から名づけられたものなのです。
中国では昔から、人が死んで埋葬する前に室内に置いておくと、夜になって突然動き、人を驚かすことがあると言われていました。その言い伝えから、硬直した死体でありながらいつまでも腐乱せずに動き回る妖怪「キョンシー」が生まれたのです。
しかし、映画でのコミカルなキョンシーとは違って、本物のキョンシーは熊よりも力があってたいへん凶暴な性格をしているそう。基本的にキョンシーは硬直した死体なのでなめらかに動くことができませんが、なんと、年月が経ったキョンシーは空を飛ぶこともできるようになるということ。神出鬼没な上、人間をさらって殺したり食べたりする恐ろしい妖怪なので、これを退治するために「道士」と言われる道教の修行をした人たちが現れたのです。
キョンシーは、辮髪に人民服といった中国らしい格好をしているので、「中国版ゾンビ」という認識のもと、中国の妖怪代表として世界に広まったといえます。
石から生まれた孫悟空も実は妖怪
中国古典小説「西遊記」の主人公である孫悟空も、仙術を会得した猿の妖怪といえます。
東勝神州傲来国の沖合に浮かぶ、花果山の頂上にあった岩から落ちた石の卵から生まれた石猿、孫悟空。
不老不死の望みを叶えるために修行をし、オールマイティーな神通力を身につけますが、あまりの傍若無人っぷりを発揮しだしたためお釈迦様から怒られて500年もの間、五行山に封印されてしまいます。のちに三蔵法師が孫悟空を助け出して、猪八戒や沙悟浄らといっしょに天竺への旅のお供とし、各地の妖怪たちと闘ったりする物語はみなさんご存知のとおり。特にラスボスともいえる牛魔王とのエピソードは超有名ですよね。
石から産まれた石猿である孫悟空も妖怪ですが、「西遊記」に出てくる妖怪たちの多種多様さには驚かされます。いずれも、動物か植物が元となっている妖怪なのが面白いです。
中国のかっこいい妖怪、美しい妖怪
さて、中国の妖怪にはこのように多岐にわたった種類が存在しますが、その中から厳選したかっこいい妖怪や美しい妖怪をご紹介します。
ヘキ邪(ヘキジャ)
ヘキ邪とは辟邪と書かれ、中国で言い伝えられている神獣の一種です。
頭に2本の角が生えていて鹿のような姿をしており、邪悪を避けてくれると言われています。特に、お墓の守護神とされていて、古墳からヘキ邪をかたどった物品が出土されたり、墓所の入り口にヘキ邪の石像が鎮座していたりします。
中国の神話や伝説のうち有名なものを描いた「中国伝統十二妖精画」の中の一つとして、ファンタジー感あふれる美しい鹿人間の姿が絵になっています。頭に角がついた女性の上半身に鹿の下半身、という蠱惑的なスタイルがなんともたまりません!
牛頭(ゴズ)
牛頭(ゴズ)とは、地獄で亡者達を責め苦しませる獄卒の一種で、牛の頭に体は人間の姿をした鬼のことです。馬の頭に体は人身の姿をした馬頭もいて、牛頭と馬頭はセットで語られることが多く「牛頭馬頭」と言われます。中国では「牛頭馬面」とも言われ、仏教の思想に基づく地獄が書かれた中国の書籍にはよく出てきます。のちに中国では、魂を冥土へいざなう使者とも言われるように。
「中国伝統十二妖精画」で描かれている牛頭は、筋肉ムキムキのマッチョ番人です。牛の頭とバランスの良い体になっていて、「頼れる体育系男性」といった風情がステキ!
馬頭(メズ)
馬頭(メズ)とは、牛頭と同様、獄卒のひとつであり、馬の頭に体は人間の鬼のことです。上記のように牛頭とセットで語られていますが、「中国伝統十二妖精画」では、地獄の番人にふさわしい異形感を持ちながらもシュッとしたカッコよさがあり、かなりかっこいいです。いわゆる細マッチョ系なのでたぶんモテモテのはず。
夜叉(ヤシャ)
夜叉(ヤシャ)はヤクシャ、ヤッカ、薬叉とも書かれ、阿修羅、羅刹と並んでインド発祥の三大鬼神の一つとされています。もとはインド神話に出てくる神ですが、のちに仏教に取り入れられ護法善神の一つとされました。
「中国伝統十二妖精画」では、矛や盾を持ち龍に乗った複雑怪奇な姿で描かれ、ガジェット的な魅力を放っています。
狐仙(コセン)
狐仙(コセン)は、中国で言い伝えられている狐の妖怪です。狐が歳月をかけて修行を積み、神通力を獲得した結果、狐仙となったということ。ちなみに中国の古書には、狐が修行を積んで術を修める話が多く記載されています。昔から「術を使う狐」はポピュラーな存在だったんですね。
「中国伝統十二妖精画」では、とても色っぽく美しい女性の姿として描かれています。あまりに美しすぎてちょっと狡猾そうに見えてしまうのは、やはり本性が狐だからでしょうか?
まとめ
以上、いろいろな中国の妖怪についてまとめてみました。日本の妖怪の7割が中国からのものという説には驚きましたが、天狗なんかも中国由来だったということで、幅の広さを感じます。
「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげる氏も中国妖怪についていくつかの著作を残していて、「中国にはもっと面白い妖怪がたくさんいるに違いない」と書いています。
御大がそのように中国妖怪に興味をひかれたのも当然で、現在では中国妖怪をアレンジしたキャラクターがたくさんマンガやゲームなどに登場しています。また、小説やドラマなどジャンルを問わず、中国の妖怪物語をベースとしたストーリーも数多くあります。
奇想天外でわかりやすいキャラ造形やストーリーは、イマジネーションの源泉となりやすいのかもしれませんね。
次のページには、中国の妖怪一覧を用意しています。順次詳細を追加していきますので、まずは名前を見てどんな妖怪か想像して楽しいんでください。順次妖怪の詳細リサーチしてまとめていきます。今後ともよろしくお願いします。