目がクリッとしていてほっそりした体つきをしているイタチ。ペットとして大人気のフェレットもイタチの仲間です。かわいいイメージのイタチですが、実は気性が荒くて怖いもの知らずなんですって!そんなイタチの姿をしている妖怪が「鎌鼬」(かまいたち)です。
妖怪「鎌鼬」とは
鎌鼬(かまいたち)は、日本に伝えられる妖怪のこと、もしくはそれが起こすとされた怪異現象のことです。妖怪としては、一般的に両手に鎌のような巨大な爪を生やしたイタチのような姿で描かれます。
鎌鼬は、つむじ風に乗って現われ、両手の鋭い爪で人を切りつけます。被害者は刃物で切られたような鋭い傷を受けますが、痛みはなく、傷からは血も出ないともされています。
また、鎌鼬に斬られた傷は普通の治療法では回復しませんが、古い暦を黒焼きにして膏と混ぜて、それを湿布に塗って傷口に貼ると完治すると言われています。
「鎌鼬」の語源
「かまいたち」という言葉の語源は、傷口が鋭利な刀で斬られたようになるので「構え太刀」(かまえたち)と呼んだものの訛りであるとも考えられています。「構え太刀」と呼ぶ場合、鎌鼬をイタチの妖怪とする説とは異なり、風神の太刀に当たったという説に該当します。
そして「いたち」という語から、江戸時代中期以後は、鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に見られるように鎌のような爪を持ったイタチの姿をした妖怪として絵画に描かれるようになったのです。古来日本ではイタチはキツネやタヌキのように化けたり、あらゆる怪異を引き起こす動物とされていたので、この役にうってつけだったのかもしれません。
もともと鼬の姿の妖怪だったわけではなく、「構え太刀」→「かまえたち」→「かまいたち」→「鎌・鼬」に変化していったんですね!
「鎌鼬」の伝説
地域によってさまざまな言い伝えが残されています。人を切って傷つけると考えられた風は、全国に伝えられていて、特に大雪の地方にその言い伝えが多いようです。
各地に伝承される鎌鼬は、現象自体は同じですが正体についてはそれぞれ違います。また、つむじ風を「かまいたち」と呼ぶ地方も数多くあります。
和歌山県では、路上で誤って転んでケガをした時、その傷口が鎌で切ったような形なら、かまいたちのしわざであるとされていました。また奈良県では、かまいたちに噛まれると人は転倒してしまい傷口が開くが血は出ないといわれています。
飛騨地方では、三匹の親子(または兄弟)鎌鼬が、まず人を転ばし、次に傷付け、そして薬を塗っていくので出血がなく痛みもないという伝説があります。(いったい何のためにやっているんでしょう?)
また、新潟では「鎌切坂」で転ぶと鎌で切ったような傷がつき黒い血が出て苦しむといわれ、それはカマキリの怨霊のせいと伝えられています。高知では葬式の後使われたまま放置した鎌が「野鎌」という妖怪に化けて鎌鼬のような現象を起こすともいわれています。
また野外ではなく屋内での体験談もあり、江戸の四谷で便所で用を足そうとした女性や、牛込で下駄を履こうとしていた男性が鎌鼬に遭った話もあります。
このように類話も各地にたくさん存在しますが、いずれも「いつの間にか皮膚が切られている不思議な現象」から生まれて伝承されてきたものだと言えるでしょう。
まとめ
風が吹いてきてピュッと皮膚が切れる怪奇現象から生まれた妖怪「鎌鼬」。その姿を鎌のような爪を持つイタチの妖怪としたのは後付けだったんですね。可愛らしいイメージを持つイタチですが、実は気性が荒くてけんかっ早い性格というところも「鎌鼬」のキャラクターにぴったり合っているのではないでしょうか。あなたを切ろうと待ち構えている鎌鼬がそこにいるかもしれませんよ・・・!