妖怪といえば、だいたい恐ろしい見た目をしているものですが、中には見目麗しい美青年の妖怪もいるようです。こんなイケメン妖怪にだったらどんな怖いことをされても寿命が多少縮んだってぜんぜん平気だったりして?!
妖怪「桂男」とは
桂男(かつらおとこ)とは、中国の神話や伝承に登場する月に住む人、または月をずっと眺めていると現れて見ている人の寿命を縮めるとされる日本の妖怪のことです。
この中国の神話の内容から、「桂男」という言葉は「美男」のことをさす慣用句として使用されることもあるようです。
日本神話との関係
中国の伝承において「月」と「桂」は同一の意味合いを持つ表現がされていますが、日本おいても例えば、平安時代の『拾遺抄』に「久かたの月の桂もをるばかり家の風をもふかせてしがな」という歌があるように「月」と「桂」は昔から結びつけられています。また、『万葉集』にもこのような表現の歌が収録されています。さらに『伊勢物語』の中では、この万葉集の歌を踏まえた「桂男の君のような」という表現がされていることから、以降の日本文学作品において「桂男」は美男のことを指すようにもなりました。
このような美男子としての「桂男」とは異なった、妖怪としての「桂男」は江戸時代の奇談集『絵本百物語』に描かれています。
「月の中に隅あり。俗に桂男という。久しく見る時は、手を出して見る物を招く。招かるる者、命ちぢまるといい伝う。」・・・つまり、月の中にいる妖怪「桂男」は、じーっと自分を見つめる人間を招き寄せてその命を縮めるそうです。うーん、いったいどれだけ魅力的な妖怪なのでしょうか・・?
また、和歌山県那智勝浦町に桂男と呼ばれる妖怪の伝承があったと記録されています。満月ではないときに月を長く見ていると、桂男に招かれて命を落とすことにもなりかねないという言い伝えです。
ちなみに「桂男」は、月にいる「兎」の話と同じようにインドの説話が発祥で中国を経て日本に伝わったそうです。それが日本独自の妖怪「桂男」になったのには理由があります。日本神話には月の神であるツクヨミが保食神を殺害したという話があって、月の神には死のイメージがついているのです。そのような伝説・神話が重なって、桂男に招かれると寿命が縮まるという説ができたとされています。
中国の「桂男」
中国で唐の時代に編まれた『酉陽雑俎』によれば、桂男はもともと西河出身の呉剛という名の人間の男性だったそうです。彼は、禁じられていた仙法を学んだ罪で月にある「月宮殿」という大宮殿で500丈(約1500メートル)もの高さの桂の木(モクセイのこと)を伐っているということ。いまだに月で罪を償っているのでしょうか?
まとめ
「月」と木の「桂」との関係の深さや中国伝承での「桂男」と日本伝承での妖怪「桂男」の違いなど、おわかりいただけたことと思います。どちらかというと日本の妖怪「桂男」の魅力が気になるところです!
月がきれいな夜に空を見上げていたら、桂男サマに招かれるかもしれない・・・!