妖怪「猿神」は神様なの?悪い奴なの?答えはどっちもです。

「猿神」をご存知の方は、「猿神」は「神」とついているので神様なんじゃないの?と思いがちですが、実は妖怪としての悪い「猿神」も存在するようです。どちらも同じ猿神なのでいっしょに紹介します。

妖怪としての「猿神」

妖怪としての「猿神」は、中世の日本の説話に登場するサルの妖怪です。

もともとは猿「神」だった猿神ですが、零落して妖怪となったという説があるように、妖怪となった猿は基本的に人間に害をなすものとして言い伝えられています。若い女性の生贄を求めてくるので、それに怒った通りすがりの漁師や僧侶が退治する、というパターンの話がほとんどです。

他にも石川県の伝承には、ある武士が尻を撫でてくる獰猛な人食い大サルと格闘する話や、岡山県や徳島県では猿神は憑き物とされており、憑かれた人間は暴れ出すと言われていて、それは犬神に憑かれるよりもひどい憑りつかれ方だという話があります。

神様としての「猿神」

日吉神などの太陽神の使者とされるサルの化身を「猿神」と伝える説もあります。

サルが日吉神の使者とされた由来の一つとして、漢字の発明者とされる古代中国の伝説上の人物・蒼頡が「申(さる)に示す」と意味で漢字の「神」を発明したことや、サルたちが日吉大社に集まったことなどが記述されています。こういった伝承は、仏教が日本に伝来するにあたって、それ以前から日本で信仰されていた太陽神である日吉神などの日本古来の神の信仰とを繋ぎ合わせたものとして考えられています。

猿神には太陽神として伝えられている面がありますが、「日吉」の表記が太陽に通じていることや、サルが日の出とともに騒ぎ出す性質を持つため、サルと太陽が関連づけられたとする説が多いようです。しかし、だんだん人々が農耕生活から離れ、日の出と日の入りを基盤とした生活習慣も少なくなるにつれ、太陽神としての猿神の存在感は薄れていったと言えます。

しかし、太陽神のみならず、中世から近世にかけて流行した山王信仰においてもサルは神の使いとしての役割を担っていて、そういった面からは「山の神」としても尊ばれました。

日本昔話「猿神退治」

「今昔物語集」「宇治拾遺物語」などには、猿神は人間に害をおよぼす妖怪として登場しており、それを退治する昔話が多く存在します。中でも「今昔物語集」巻26「美作國神依猟師謀止生贄語」に出てくる猿神の話が有名なのでご紹介します。

 

美作国の山の神である大ザルは年に一度、女性の生贄を捧げるように人間に求めていました。ある年、生贄にされる予定の少女の家族が悲しんでいると、そこへ訪れて事情を聞いた若い猟師が何とかしてあげようと知恵を絞りました。そこで彼が思いついたのは、少女の身代りとして生贄になりサルをやっつけることでした。生贄として犬と一緒に棺に入って待っていると、大ザルが100匹ほどのサルを引き連れて現れたので、彼は飛び出して犬とともにサルたちを次々に倒しました。大ザルだけが残りましたが、二度と生贄を求めないとして許しを請うたので、猟師は大ザルを逃がします。それ以来、生贄が求められることはなくなったということです。

 

他にも猿神退治の日本昔話がたくさんありますが、おおむねこれと同じように、サルが人間の女性を生贄を求め、通りすがりの猟師や僧侶が身代りとなって退治するというものになります。そして、上記のように猿神退治の話には必ずといって良いほど犬が登場することも特徴です。そういえばサルと犬が登場する日本昔話って多いですよね!

まとめ

神様として言い伝えられていた「猿神」が、零落ののちに悪行を働く妖怪「猿神」として伝承されるようになった・・・そんな過去があるようです。サルは人間に一番近い生物でもあるので、人間にとって良い神様でもあり悪い妖怪でもあった、というところでしょうか。いずれにしてもこれからもサルと仲良くしていきたいものですね!

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